この2週間更新していませんでしたが、先週1週間は Type& (タイプアンド)というイベントのために日本に行っていたのです。きのうドイツに戻りました。
6月17日の土曜日は朝から夜まで Type& 会場に詰めていて、その翌日の日曜はこの3年間たまっていた私用をこなすために動き回っていました。ドイツに向けて出発の便が夜だったので、夕方に空港に向かうまでの時間をフルに使いました。
そこでまず本屋さんに直行、欲しかった本を買いました。
左は、Type& でゲストとして登壇していただいたフォントかるた制作チームによる『愛のあるユニークで豊かな書体』。写研で働いていたころは、まさかこの文言がそのまま書籍のタイトルになるとは思ってもみなかった。
Type& 会場では、トークのあとの懇親会で参加者のかたたち三人とかるたをすることになり、軽い気持ちでのんびりまったりと楽しむつもりが、真剣になってしまいました。最初はぜんぜんとることができず、このまま負けるのかと思って本気で心配になりましたが、フォントかるたの面白さで闘争心に火がつき、結果はかろうじて僅差で優勝。
右は、タイプバンク時代にいっしょに働いた高田裕美さんによる『奇跡のフォント』。タイプバンクの日本語書体に合わせる欧文を私が担当したとき、高田さんからは欧文デザインについてフィードバックをいただきました。この本のことはつい最近、人から聞いて知ったのですが、その人がすごく感動したと言うので、読まなきゃと思っていたんです。
そして、本を買ったあとで、これも日本にいる間に絶対行くぞと決めていたマクドナルドへ。その理由というのが、ハッピーセットにおまけでついてくる『キッズぺディア:マークの図鑑』をゲットするためです。
ドイツでは Happy Meal (ハッピーミール)といっていて、子供の小さかった頃は何度か頼んだことがあると思うけど、日本ではたぶん初めて頼んだハッピーセットだったので注文の仕方がよくわからず、飲み物を選ぶ段階でハッピーセットについてこないものばかり2回選んで店員さんを困らせてしまった。
だいたい、「こんにちは、あのー、ハッピーセットを頼んだら『マークの図鑑』ついてきますか?」という注文の仕方がすでに普通でないし、むしろ失礼… 挙動不審な変なおじさんだと思われただろうなー。でもハンバーガーはちゃんといただいて、あやしい客に対して笑顔で快く対応してくれた店員さんにも店を出るときにしっかりと挨拶しました。
図鑑は、身の回りやマクドナルドの店内の食品の容器に使われていてすぐに見つけられるマークなんかも載っているし、自分でシールを貼って完成させる遊びもあります。
この小冊子は、2017年の Type& にゲストとしてご登壇いただいたアイ・デザインの児山啓一さんが監修されたもので、じつは私も Type& 会場で児山さんに声をかけていただいて初めて知ったのです。児山さんのご著書については以前の この記事でも書いています。
このおまけの小冊子で興味が湧いたら、小学館から出ている本の『キッズぺディア:マークの図鑑』でさらに知識を深められるわけです。これをきっかけにマークや標識、ピクトグラムに興味を持ってくれる人が増えてくれたらいいな。
Aachen (アーヘン)市の市庁舎です。
市庁舎からちょっと離れたところににある国際新聞博物館。
建物自体が1495年のものだそうです。最後の4文字が「1495」らしい。
タイポグラフィと書体の展示の場所もありました。
各国の重要な事件を報じた新聞を引き出して見ることのできる展示もあります。
これは、1898年発行のフランスの日刊新聞『L’Aurore』紙で、文豪エミール・ゾラが当時のフランス大統領に宛てた「私は弾劾する!」という公開状が一面になったものです。たまたまこの事件が題材になった映画を観たことがあって目が止まりました。
反ユダヤ主義がはびこる当時のフランスで、スパイの疑いをかけられたユダヤ人将校が冤罪で投獄されたことに対して強い非難をしたもので、ゾラはその後に名誉毀損で有罪となり、投獄を逃れるため一時的に英国に逃れます。数年後に、そのユダヤ人将校は有罪判決の取り消しを勝ち取って、国家勲章も授与されました。
文字デザインに注目してみると、『L’Aurore』のサンセリフ体が良い味を出していますし、大文字の J が独特です。
私がこの新聞博物館に行ったときは、特別展示で「フェイク・ニュース展」というのをしていました。それについては こちらの記事 で。
ドイツ西部、オランダとベルギー国境に近い町 Aachen(アーヘン)に行ってきました。ドイツで最初にユネスコ世界遺産に登録された大聖堂を見るためです。
1200年の歴史を持つ大聖堂。8世紀末から建設が始まって9世紀初めに完成したのが中央の8角形の建物で、その後600年経って写真左側のゴシック様式の礼拝堂が14世紀終わりから15世紀初めにかけて建てられます。そのため、複数の建築様式の聖堂が隣り合って現在に至っているわけです。
Maulbronn (マウルブロン)に行ったのは、ユネスコ世界遺産に選定されている修道院が主な目的だったんですが、敷地に文学博物館が併設されていて、そこで展示されていたヘルマン・ヘッセの書籍『Das Glasperlenspiel』(日本語にすると『ガラス玉演戯』)のカバーが素敵でした。
1943年の初版らしく、Bauer と Berthold の花形活字をうまく組み合わせて使っています。ヘッセは『車輪の下』しか読んだことがないのですが、この本、読みたくなってきました。ヘッセがこの Maulbronn 修道院に併設されていた神学校に通っていたことも今回初めて知りました。
今と違って写真やイラストレーションを組み合わせることの少なかった金属活字の時代、装飾のための「花形活字」というものがありました。下の写真は、ドイツの活字会社各社の花形の書体見本。左から、Berthold、Bauer、Klingspor です。英語では花形活字は 「printers’ flowers」とか「fleuron」などと呼ばれています。ドイツではこの見本帳の表紙にあるように「Schmuck」つまり宝石です。
有名な書体デザイナーの中には多数の花形活字を手がける人もいました。書体デザイナーによって花形のデザインにも個性が出ます。Berthold と Bauer はそれぞれ Herbert Post と E. R. Weiss のデザインした花形です。この記事 で書いた Elizabeth Friedlander も、Weiss に師事して美しいローマン体活字を出し、その後 Linotype と Monotype から飾り罫や花形活字を出しています。
このヘッセの書籍のカバーの外側の飾り罫で使われていたのは、四隅のが Bauer 社の花形で E. R. Weiss のデザインした12ポイントの 4246、その次が 4287、それをつなぐ白と黒の菱形が合わさった花形は、Berthold 社の Herbert Post がつくった Post Schmuck の6ポイントの花形 6 570 でしょうか。
一つのシリーズの中での組み合わせでなく、別の会社の花形活字を合わせているところが面白いです。こういう罫線にしたいと思ったけどイメージに合わなかったからなのか、それとも手元にたまたまあったものを使っているのか、どっちなんだろう。
花形活字のほうにばかり目がいってしまいましたが、肝心の書籍タイトル「Das Glasperlenspiel」の部分は Stempel Garamond のイタリック体だと思います。
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