Maulbronn (マウルブロン)に行ったのは、ユネスコ世界遺産に選定されている修道院が主な目的だったんですが、敷地に文学博物館が併設されていて、そこで展示されていたヘルマン・ヘッセの書籍『Das Glasperlenspiel』(日本語にすると『ガラス玉演戯』)のカバーが素敵でした。

1943年の初版らしく、Bauer と Berthold の花形活字をうまく組み合わせて使っています。ヘッセは『車輪の下』しか読んだことがないのですが、この本、読みたくなってきました。ヘッセがこの Maulbronn 修道院に併設されていた神学校に通っていたことも今回初めて知りました。
今と違って写真やイラストレーションを組み合わせることの少なかった金属活字の時代、装飾のための「花形活字」というものがありました。下の写真は、ドイツの活字会社各社の花形の書体見本。左から、Berthold、Bauer、Klingspor です。英語では花形活字は 「printers’ flowers」とか「fleuron」などと呼ばれています。ドイツではこの見本帳の表紙にあるように「Schmuck」つまり宝石です。


有名な書体デザイナーの中には多数の花形活字を手がける人もいました。書体デザイナーによって花形のデザインにも個性が出ます。Berthold と Bauer はそれぞれ Herbert Post と E. R. Weiss のデザインした花形です。この記事 で書いた Elizabeth Friedlander も、Weiss に師事して美しいローマン体活字を出し、その後 Linotype と Monotype から飾り罫や花形活字を出しています。
このヘッセの書籍のカバーの外側の飾り罫で使われていたのは、四隅のが Bauer 社の花形で E. R. Weiss のデザインした12ポイントの 4246、その次が 4287、それをつなぐ白と黒の菱形が合わさった花形は、Berthold 社の Herbert Post がつくった Post Schmuck の6ポイントの花形 6 570 でしょうか。


一つのシリーズの中での組み合わせでなく、別の会社の花形活字を合わせているところが面白いです。こういう罫線にしたいと思ったけどイメージに合わなかったからなのか、それとも手元にたまたまあったものを使っているのか、どっちなんだろう。
花形活字のほうにばかり目がいってしまいましたが、肝心の書籍タイトル「Das Glasperlenspiel」の部分は Stempel Garamond のイタリック体だと思います。