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欧文組版のマナー実例: ダーシはハイフンと違う(2)

さらに、ハイフンとダーシの例です。

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一行目は Cobden-Sanderson という人の姓です。この本の著者は Daniel Berkeley Updike ですが、この場合「Berkeley」は姓でなくミドルネームなので、その次の「Updike」とハイフンでつなぐことはありません。

そして、脚注の一行目と二行目の長い横棒はダーシで、補足説明に使っています。

上の例は Daniel B. Updike 著『Printing Types, Their History, Forms, and Use; A Study in Survivals』第二巻からです。1960年代の書籍なので、使用書体は金属活字の Monticello ですが、ありがたいことにマシュー・カーターさんがデジタル化してくれています。デジタル版は こちら



by type_director | 2020-06-14 03:20 | 欧文組版のマナー実例 | Comments(6)
Commented by 上田宙 at 2020-06-17 05:38 x
小林さん、質問よろしいでしょうか?
補足説明や間をとりたいときに入れるダーシなんですが、前後にワードスペースを入れてen dashで繋ぐ場合と、スペースなしでem dashで繋ぐ場合(上図では微調整のための細いスペースが入っているように見えますが)では、どんなニュアンスの違いがあるのでしょう? 文章の雰囲気、新旧、硬軟、英語米語の違いなどで使い分けるのでしょうか?
私はこれまで、一人が書いた一つの記事ではどちらかに統一した方がいいのかな、と思っていたのですが、一つの記事の中で著者が使い分けることもあるのでしょうか? たとえば、ちょっとした間はen dashで大きくひと呼吸はem dashとか?
このあたりの感覚、どうもよくわからなくて。ご教授いただけましたら幸いです。
Commented by marisophie at 2020-06-17 18:18 x
補足説明に使うダーシがこれまで見せていただいたものより長く感じますが、この本はアメリカで出版されたものでしょうか。
私は普段、アメリカの一般的な文章スタイルガイドに沿って英文を書いているので、範囲を示すときは短いダーシ、補足説明を入れるときは長いダーシを使っています。
Commented by type_director at 2020-06-22 03:34
上田宙さん、marisophie さん、ご質問ありがとうございます。en dash (半角ダーシ)と em dash(全角ダーシ)の使い分けについては、以下のヨースト・ホフリ著『ディテール・イン・タイポグラフィ』の説明が簡潔でわかりやすいので引用します。
「en ダーシは、フレーズどうしがつながっていることや省略を示すのに使われたり、挿入節に用いられたりする。なお、一部の英語組版の慣習、特にオックスフォード大学出版局のルールやアメリカ英語一般においては、em ダーシ(ただし前後にスペースは挿入しない)を用いることが標準とみなされる。」(40ページ)

ここで例に挙げた『Printing Types』は、オックスフォード大学出版局の本で、アメリカで出版されています。出版社のハウスルールなどによって違いがあるかもしれません。

上田さんのおっしゃるとおり、em ダーシ前後に少しスペースが入っているようにも見えますね。ただ、雰囲気によって、あるいは間合いの長さによって en ダーシと em ダーシとを使い分けるような例は見たことがありません。どちらか一方で、同じルールで一貫して書き通すのが一般的と思います。

marisophie さんのおっしゃるように、範疇を示す場合は前後にスペースを入れない en ダーシ、というのは英米どちらにも共通します。そこでは em ダーシを使うことは一般的ではありません。
Commented by 上田宙 at 2020-06-24 06:10 x
小林さま、ご回答ありがとうございます! ヨースト・ホフリさんの本に、確かに書いてありました。ちゃんと読んだはずなんですが、すっかり忘れていました……。

念のためと思いオックスフォード・マニュアルに当たってみると、Em ruleのページにほぼホフリさんと同じ説明が載っていました(先に調べとけって話ですね……すみません)。「補足説明のとき、オックスフォードやほとんどのアメリカの出版社ではemダーシを使い、他のイギリスの出版社では前後にスペースを入れてenダーシを使う」みたいなことが書いてありました。

やはり補足説明時のenとem ダーシは、同じルールで通すのが一般的なんですね。最近受け取った原稿(日本語原稿を日本人が英訳したもの)で混在が見られたので、どうしたものかと思っていました。これで安心して発注者に提案できます。ありがとうございました!
Commented by type_director at 2020-06-25 00:24
> 上田宙さん 回答がお役に立ったようで何よりです! ちなみに、ホフリさんの本のドイツ語版には、em ダーシは今日のドイツ語の組版ではほとんど使われない、と書いてありますから、言語によってはダーシの使われ方に差があることもわかりました。 また、上田さんのご質問にあったような、間合いによってダーシの使い分けの可能性があるかということを考えながら本を何冊かめくってみましたが、仮にそのような微妙な表現をダーシの長さの使い分けでやろうとしても難しいだろうと思いました。たとえば箱組で文章ブロックの右端をジャスティファイする場合、行によってダーシの前後の空き具合が変わってきて、ことによったら en ダーシ/ em ダーシの横線の長さの差よりも行ごとのワードスペースの開き具合の差の方が大きくて、たまたまワードスペースが広めになった行では間合いが大きく見えることがありそうです。
Commented by 上田宙 at 2020-06-25 04:37 x
ドイツではemダーシはほとんど使わないとか、国ごとに違いがあってすごく面白いですね!
私も手近にあった英語の本をいくつか見てみたんですが、やはり補足はemダーシだけのものがほとんどでした。その中の一冊にちょっと面白い組み方のページがあったので、SNSで紹介しました。(コメントには画像が貼れないのでURLをば)
https://twitter.com/uyushorin/status/1275859140573671424
この本もemダーシで統一されていますが、前後はベタだったりスペースが入っていたりと、けっこう適当な感じです。ただ、おおむね普通のワードスペースよりも狭めのスペースが多いようでした(写真のページのはかなり大胆に空いてますが)。出版元はロンドンのFaber and Faberという出版社で、印刷もイギリスのようです。
これは造語だらけの奇妙な作品なので、組版者はさぞや大変だったろうなあと同情してしまいました……。