人気ブログランキング | 話題のタグを見る
エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
イタリック体の文字の微妙な傾き
雑誌『Typography』 最新号 がいよいよ発売です。

特集「美しい本と組版」で組版についてかなり掘り下げて、書体会社10社100書体の文字組見本の小冊子つきだそうで、お買い得感ありです。

私の連載「文字の裏ワザ」では、イタリック体の文字の微妙な傾きの違いについて解説しています。

たとえば、たいていのセリフ書体の b d l f の傾きは全部微妙に違っています。しかも一定の法則がある。微妙なのですぐには気づきませんが、文字を重ねてみると傾きを変えているのがわかります。上半分の長い直線部分の傾きが違うから重ならないんです。

まず Adobe Garamond のイタリック。
イタリック体の文字の微妙な傾き_e0175918_15391783.jpg


これは ITC Galliard のイタリック。
イタリック体の文字の微妙な傾き_e0175918_15393843.jpg


b は右に倒し、逆に d は少し起こしてつくると安定する、という裏ワザを使っています。

それって古い感じをねらった書体だけなんじゃないの?って思っている人もいると思うので、 Bodoni でも比べてみました。キッチリ揃った見え方の書体でも、やっぱり傾きを変えています。それは意図的にやっているんです。
イタリック体の文字の微妙な傾き_e0175918_1540527.jpg


こういうのはもう理屈じゃなくて、そのほうが落ち着くというしかない。職人の勘がそうさせるんでしょうねー。私も、ふだんからローマン体をつくるときは、b だから右に倒して…ってつくっている。それが体に染みついているので、自分でも気づかずに調整しているわけですが、今回記事を書くときに、そうやって「職人なら当たり前」で通り過ぎがちな部分に改めて注目して分析しています。

この裏ワザがわかると、この写真のパッケージみたいな傾きの暴れたイタリックを見ても、うーむ良い味出しておるわい、という余裕の目で見ることができます。一見バラバラに見える傾きにも、ちゃんと理由があるのがわかるから。
イタリック体の文字の微妙な傾き_e0175918_15163073.jpg


ちなみに書体は Monotype Garamond (モノタイプ・ガラモン)の Alt Italic つまりオルタネートのイタリックです。

サンセリフ体にも、これとは別の裏ワザが大文字に使われています。それは記事のほうをご覧ください!
by type_director | 2016-05-08 07:17 | 文字のしくみ | Comments(0)