雑誌『Typography』
最新号 がいよいよ発売です。
特集「美しい本と組版」で組版についてかなり掘り下げて、書体会社10社100書体の文字組見本の小冊子つきだそうで、お買い得感ありです。
私の連載「文字の裏ワザ」では、イタリック体の文字の微妙な傾きの違いについて解説しています。
たとえば、たいていのセリフ書体の b d l f の傾きは全部微妙に違っています。しかも一定の法則がある。微妙なのですぐには気づきませんが、文字を重ねてみると傾きを変えているのがわかります。上半分の長い直線部分の傾きが違うから重ならないんです。
まず
Adobe Garamond のイタリック。
これは
ITC Galliard のイタリック。
b は右に倒し、逆に d は少し起こしてつくると安定する、という裏ワザを使っています。
それって古い感じをねらった書体だけなんじゃないの?って思っている人もいると思うので、
Bodoni でも比べてみました。キッチリ揃った見え方の書体でも、やっぱり傾きを変えています。それは意図的にやっているんです。
こういうのはもう理屈じゃなくて、そのほうが落ち着くというしかない。職人の勘がそうさせるんでしょうねー。私も、ふだんからローマン体をつくるときは、b だから右に倒して…ってつくっている。それが体に染みついているので、自分でも気づかずに調整しているわけですが、今回記事を書くときに、そうやって「職人なら当たり前」で通り過ぎがちな部分に改めて注目して分析しています。
この裏ワザがわかると、この写真のパッケージみたいな傾きの暴れたイタリックを見ても、うーむ良い味出しておるわい、という余裕の目で見ることができます。一見バラバラに見える傾きにも、ちゃんと理由があるのがわかるから。
ちなみに書体は
Monotype Garamond (モノタイプ・ガラモン)の Alt Italic つまりオルタネートのイタリックです。
サンセリフ体にも、これとは別の裏ワザが大文字に使われています。それは記事のほうをご覧ください!