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世界的な書体デザイナーって(4)
フルティガーさんがヨーロピアン・デザイン賞の殿堂入り、というニュースがいま入ってきました!

その報せを受けた フルティガーさんのインタビュー動画 です。

インタビューの中で、フルティガーさんはお礼を述べた後、「街を歩いてごらん、Frutiger 書体があちこちにあるよ。本当に20世紀の書体になったんだ」と語っています。これは「時代を象徴する書体」という意味と受け取っていいと思います。

彼といっしょに数年間仕事をしているから受賞が嬉しいのはもちろんですが、書体デザインというわりと地味な仕事にちゃんと目を向けてくれて、しかも正当な評価をしてくれるヨーロッパのデザイン界の深さにも感激。
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# by type_director | 2009-06-18 15:48 | Comments(4)
世界レベルのカリグラフィ展・7月2日から14日まで
日本人なのに120年の歴史のあるドイツの会社でディレクターを務めてるもんだから、私のことを珍しがってくれたり褒めてくださったりしている方がいます。なかには「ぶっちぎりのプロ」なんて書いてくれる方もいらっしゃいます。

その私が「この人こそぶっちぎりのプロ!」って他の人に自慢したくなる友達がたくさんいるんです。そういう人たちをまとめて紹介する機会って、これまでなかったんですが、ついにそのチャンスが来ました! J-LAF(Japan Letter Arts Forum)主催の 日本・ベルギーレターアーツ展 (7月2日から14日まで)です! 日本人のカリグラフィのレベルってここまで来てるのか!って驚いてください。

一等賞の橋口恵美子さん、ロンドンに住んでいます。初めて会ったのは2年前だったかな? 私が今年の1月にロンドンに行ったとき、この受賞作「The Nightingale and the Rose」の下書きを持ってきてくれたんだけど、あれは一等賞になりますよ。

橋口さんは、じつは昨年10月に私がロンドンに遊びに行ったときにその下書きを私に見せようとして持ってきてたらしい。あとで聞いてわかったんだけど、橋口さんは気後れがしたとかでそのまま持って帰って、それで3ヶ月遅れで今年1月に見せてくれたわけなんです。こんなスゴイの、もっと早く見せてよって。橋口さんとカリグラフィ仲間と私とがお昼を一緒に食べたそのロンドンのレストランのテーブルで、互いの作品を取り囲んでガヤガヤやってました。私もいちおう橋口さんに助言らしいことを行ったと思うけど、もうそんなのどうでもいいっていう完成度でした。線がのびのびしてる。書いてて楽しいんだろうな。見てるだけで吸い込まれるっていう感覚を、ぜひ皆さんも!

あと、受賞した以下の方たちの作品そのものは見ていませんが、ゴードン恵美さんはイギリスで石彫りのトップクラスの工房の職人さんを務めた人。下田恵子さんもロンドン在住のカリグラファで、もともとは日本の書道から入った人。ふたりとも、ロンドンのレストランでガヤガヤやってたときにいっしょにいました。二人の作品が見られるTsukusi Design のサイトは こちら

あとは日本で活躍する受賞者たちで、イギリスで私のあこがれのカリグラフィ学校を出た深谷友紀子さんも私とよくメールのやりとりをしてるし、白谷泉さんもこないだ4月の羽ペンづくりワークショップで久しぶりにお会いしたし。そのワークショップに誘ってくれた星幸恵さんも、即興で烏口を使ったカリグラフィを見せてくれました! 

日本・ベルギーレターアーツ展では、世界どこに行っても通用する、私が尊敬しているそんな日本人カリグラファたちの作品が見られます。もちろん私の知らないスゴイ人も選ばれているでしょう。私がカリグラフィに興味を持ったときには、日本にいながらそんな展覧会が見られるなんて考えられなかった。良い時代になりました。

ちなみに、この J-LAFさんのホームページ右下の動画も必見! こんなふうに書けたらなーっていつも思う...わずか30秒で仕上がるんだけど、これができるようになるまでの修練の日々の長さを想像しましょう。
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# by type_director | 2009-06-11 15:33 | Comments(1)
IIIIII
ついつい気合いが入りすぎて、ためになることばっかり優先してブログに書いてしまいました。ここらで、後回しになっていた「ためにならない」話題を。

こないだストラスブールに行く前にホテルの部屋をインターネットで検索していましたが、最近のウエブサイトは日本語環境が整ってきた。でも街とか川の名前とかはローマ字表記。

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縦棒6本があまりにもビジュアル的に新鮮だったので、スクリーンショットを撮っちゃいました。

川の名前は、フランスのアルザス地方を流れるイル川。大文字にすると ILL 。大文字小文字で「Ill」ってした時点ですでに「川」っぽくないか? この付近にはこういう看板とか、
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こういう地名とかあって嬉しい。なにが嬉しいって、縦棒が3つも4つも連続しているのが。
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嬉しいですよね?
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# by type_director | 2009-06-11 10:32 | Comments(0)
A と V
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古代ローマの碑文、じつに美しいですね。このローマ字の A と V 、左右の斜め線のうちの A は左側が細い、 V は右側が細い。この太い細いのバランスってどこから来ているんでしょう。

私の本『欧文書体』にも書きましたが、碑文を彫り始める前には下書きをしなくちゃいけません。それを古代ローマの人は平筆か刷毛のようなものでして、それから彫ったと考えられています。それが今の書体のバランスの元になった。そういうことを今から約20年前、イギリスで勉強していて石彫りの人のうちに泊まり込んだときにはじめて教わった。きっと目がまん丸になってたと思う。

平筆を持ってシミュレーションをすると、どっちが細くなるのか一発でわかります。平筆の先端が水平じゃなくて、ちょっと左が下がると書きやすい。
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それで書いてみるとこんなふうになる。下に敷いた青い A の字は、ローマの西暦114年ころの碑文を元にした書体 Trajan(トレイジャン)です。デジタル書体時代の今でもよく使われてます。
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薄い墨で書いてみました。ね、だから左が細くなる。同じ筆の持ち方で V を書くところを想像してください。逆に V は右が細くなりますね。それがローマ碑文の写真にある AとV の関係です。
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サンセリフ体ってありますね。みんな同じ太さの線に見えるやつ。それも、ほんとに微妙に太さの差をつけている場合がほとんどです。これはオモテ。普通に見えるはず。
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これはたいがいの書体でそうなっている。いや、そうしなくちゃ気持ち悪い。歩くときに右手と右足とをいっしょに出したみたいで。だから、裏返しのやつを見ると落ち着かないんです。裏返してみました。
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# by type_director | 2009-06-11 09:37 | 文字のしくみ | Comments(10)
U と V(2)
最近、いつも手元に置いておく本があります。寝る前に読んだりもします。『會津八一書論集』(長島健編・二玄社)で、新潟市の會津八一記念館にいる Y さんからいただいたものです。多くは昭和20年前後の講演速記とか講義記録です。その内容がじつに痛快で面白い。
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會津八一 (あいづ・やいち、1881–1956)は日本の書家、歌人、文学博士で美術史家です。早稲田大名誉教授でもありました。バーナード・リーチとも親交があったようです。そういう学識を持ちながら、日本の書道に関して、講演でこんなことを言う人でした。以下、本からちょこっとだけ引用します。

「字といふのはどこまでも平明に書かなければならぬ」

(同じ字でも読みようが違うとか、別の字でもほとんど同じに見える公卿の仮名のまぎらわしさについて) 
「まちがったら手をたたいて笑おうと思って待ってをる人があるやうな気がして、おっかなくて読めない。(中略)さういふのはペダンチックである。物識りの風の、人を驚かさうとする、さういふ衝動からやつたことである」

「見ると同時に頭にピタピタと入るやうな書道をおやりになること、これはもつとも藝術的な方法であり、態度でもあるであらう」

「筆の順序などは、どうでもいことです。三の字をどこから書いても、合計三本あればいいことです。」

スッゴイこというなー。1950年ころにそんなこと言ってたんだ。

「書道って何が書いてあるか分からないからヤだなー」と思って敬遠していた私は、このズバズバ言う八一を「ロックしていた書家」と勝手に呼んでます。彼の書は、丸文字みたいなんじゃなくて格調がある。しかもすらすらと読める! 

その八一はローマ字についても鋭い目を持っていました。

これもこの本の中に書いてあるんですが、あるとき、東京にできた新しい建物の銘板か何かを見たベテラン英語教師が八一のもとにやってきて「U の字が V になつている」のを「重大なミステーク」「どうも国辱である」と憤慨して言ったらしい。

そこで八一がピシっと、「これこそローマ字綴りだ。君はいはばイロハも知らないで英語を教えたことを恥ぢなければならぬ」といって叱り、ローマ字の資料を持ってきて納得させたそうです。

さらにアルファベットのデザインに及ぶことまで言っている。英語を教えていながら大文字 A の左右の斜め線のどっちが太いかなんて知らない人たちを叱っている。八一さんデザイナーになっていたら面白かったのに。

彼の言った大文字 A の太さについて、また別の記事で書きます。
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# by type_director | 2009-06-07 12:03 | Comments(2)