エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
<   2013年 06月 ( 6 )   > この月の画像一覧
高岡重蔵著『活版習作集』
ずっと待っていた本が、こないだ日本からようやく届きました。高岡重蔵著『活版習作集』です。
e0175918_183501.jpg


もうすでに、朝日新聞に「本場顔負けの欧文組み版の技」という題で書評が載ったそうで、私が書き加えることなんかがあるとすれば、その確かな技もそうですが、その印刷物が放(はな)っているエスプリの部分にも注目です。どう見ても、英国かヨーロッパのどこかで生まれ育った人の仕事にしか見えない。

普段、「重蔵先生」と呼ばせていただいているので、ここではこの本の著者、高岡重蔵さんのことを「先生」と書きます。っていうと、先生は「いや、『先生』ったって、ただ先に生まれただけで、べつに偉いわけじゃない」と言います。そんな人です。

先生は「小学校しか出てないんで、英語がダメ」とおっしゃる。でも、筆記試験は良い点とれないだろうけど、英国では全然ふつうに溶け込んでしまう。

実際、私の友達(イギリス人)が古本屋をやっていて、そこに遊びに行ったときに、重蔵先生の印刷物があって、「アキラ、この人知ってるか?」と興奮気味に尋ねられて、「友達だよ」と自慢できたこととか、先生といっしょにスコットランドの印刷博物館に行ったときに、先生がそこのベテラン印刷工と長い間楽しそうに印刷機についてしゃべっているのを見たこととか、200年以上前の英国の印刷の手引きを手に入れて読んだとき、そこに書いてあることと先生が活字について雑談でしゃべった内容とが見事に同じだったとか、そういうことが実際にある。

書評の言うとおり、「本場」で一流の職人と対等に話せる腕のあるかたです。しかも、なんとか真似しようとギリギリでやってるんじゃなく、英国やヨーロッパの人をニヤリとさせるような「くすぐり」や、「この日本人はなんでこんなこと知ってるんだ?」という一流の仕事をシャレで入れるという余裕がある。

なぜニヤリとさせられるのか、どこに隠されているか、巻末に30ページ以上にわたって解説が書かれています。それは発行者の上田さんが丹念に先生から聞き取ったのをわりとそのままの話し言葉で書いているので、難しくない。わかりやすい。

そう、大事なことは、わかりやすい。その印刷物を見た人を、欧文についての知識があろうがなかろうが、一瞬で英国やヨーロッパに持っていってしまう。能書きなしで、一枚の紙の中にその空気を収めて表現できるのがいかにすごいことか。

ちょっとだけ見せますね。
e0175918_184439.jpg

e0175918_1842844.jpg


これなんか、ヘルマン・ツァップさんの直筆によるイニシャルが描かれているんですが、ツァップさんにお願いして無理矢理やってもらったのでなく、ツァップさんにそうさせるための仕掛けがちゃーんとある。ぜったいツァップさんはそこでニヤリとしたはず。詳しくはこの本126ページの解説で。
e0175918_1845426.jpg


詳しい内容は発行者の こちら のページで。
販売店リストは こちら

追記:Amazon からも購入可能になったそうです。
[PR]
by type_director | 2013-06-29 11:01 | Comments(0)
アダナ
初めて今回トルコに出張で、トルコ料理といえばドイツ中どこでもあるドネール・ケバブしか知りません。知らない土地で何食べていいかわからないから、自宅からフランクフルト空港まで向かうあいだ、いつも使っているトルコ人のタクシーの運転手オズデミルさんに、トルコの話を集中的にききました。彼は毎年6月にイスタンブールの実家に、途中で仮眠を入れながら33時間走って車で帰るそうです。

イスタンブールでおすすめの食べ物を尋ねたら、迷わず「アダナ・ケバブがおすすめ!」と言われました。

「アダナ」は何のことかときいたら、トルコの町の名前で、運転手さんは実際にアダナの町で育ったそうです。「次回タクシー乗るときにアダナ・ケバブの感想をきかせてくださいよ」と言われたので、イスタンブールで絶対に食べなくちゃと思っていました。

いいこと聞いた。私からは、日本では「あだ名」というとニックネームのこと、と教えてあげたけど、あんまり役に立たない情報ですね。

コンファレンスの自分の出番が終わった翌日、お昼に食べるつもりでホテル付近を歩き、ケバブを出してくれそうなレストランの看板を見ると、2件に一軒くらいの割合で Adana Kebap が出てます。
e0175918_1154517.jpg

e0175918_11552313.jpg


ちょっとゆっくりできそうなレストランに入って食べてきました。
e0175918_1157716.jpg

棒状にしたハンバーグみたいなのは香辛料がきいていてちょっとだけ辛い、けど辛すぎない。ご飯がついていて、ご飯の部分はちょっとモチモチ感があって、それも気に入った。
e0175918_11555677.jpg


ここまでだと、ただの食べ歩きの話なんですが、ここからは以前使ってた印刷機の話。

ケバブのことはオズデミルさんにきくまで知らなかったので、実は、「アダナ」という名前で最初に思い出したのが、 この印刷機 です。

アダナ印刷機の名前は、このトルコの町のアダナからきていると言われているけど真偽は不明だそうです。

印刷機のほうのアダナは、トルコの国旗の色より深い赤色です。大人っぽい深みです。世界中にマニアがいるらしい。

実は私もアダナ Eight-Five を使っていたことがあります。日本にいたとき、小石川にある凸版印刷博物館で、このアダナを使っての印刷体験をお手伝いするインストラクターをしていたし、当時住んでいた新宿のマンションにも、人から譲り受けたアダナを置いて使っていました。2001年の年賀状はそれで刷りました。

上のサイトでは、最初のアダナが出荷されたのが1922年11月だそうで、去年が90周年だった。記事の下の方には、販売代理店はイタリア、トルコ、ギリシャ、インドなどにもあって世界100カ国近くで売られていたそうです。「最後のアダナ Eight-Five は1999年に日本で売られた」と書いてあるから、それが印刷博物館で使っているものなのかな?

私が自宅で使ってたアダナ Eight-Five は、ドイツに引っ越すことになったときに、やっぱりちゃんと使い方を知っている知人に引き取ってもらいました。いまも使ってくれています。

そういう、マニアからマニアに渡って長く使われ続けるみたいなのって、グッとくる。なんかクラシックカーとかに通じるものがあるんじゃないか?

そんなわけで、今回、トルコ人のオズデミルさんとのたわいもない雑談のおかげで、食べ物と印刷機の「アダナ」が自分の中でつながった。こんなつながりは想像してなかった。

いま見たら動画もあるんだね。

しおりを印刷しているところ(13秒)

小石川の印刷博物館にあるアダナ、日本語の説明付き(9分51秒)
[PR]
by type_director | 2013-06-16 11:38 | Comments(3)
イスタンブールで見たヒラギノ欧文
自分が関わったフォントに出会うのは嬉しい、と一つ前のブログで書きました。

イスタンブールの坂道で、レストランを探しながら歩いている途中で、目の前に現れたのがこの立看板。トルコの民族舞踊のショウだと思う。何を食べたくて歩いていたかは、次の記事に書きます。
e0175918_11341745.jpg


まさか今回のトルコ出張で、ヒラギノの欧文に出会うとは思っていなかった。

看板の反対側。ひいき目かもしれませんが、こうやって大文字だけで組むと、堂々としている感じがする。
e0175918_11363531.jpg


実は、前にもベニスで新聞の見出しにヒラギノが使われているのを見ているし、その直後に「ヒラギノ欧文のファンです」というチェコのデザイナーからメールをいただいたこともあります。

日本語書体のローマ字だとはいっても、ちゃんと海外で使えるようにつくってあると、こういうことがあるんです。
[PR]
by type_director | 2013-06-16 04:30 | Comments(0)
イスタンブールで日本の看板の話
また出張の話です。きのうからイスタンブールにいます。 このコンファレンス に参加のためです。

ドイツでは、最近テレビのトップニュースが、ドイツ国内で起きている洪水とトルコのデモでの衝突の話題ばかり。周りからもいろいろ心配されましたが、コンファレンス主催者からは、会場周辺はまったく問題ないと聞いていました。

出発前に空港で見たトルコの新聞。
e0175918_14365485.jpg


デモと警官隊の衝突の様子らしいので手に取ってみました。

読めないけど、警察がガス弾を発射、ということが書いてある気がする。
e0175918_14372654.jpg


この黄色の字は Avenir Next Condensed Heavy です。この新聞で見出しとかにガンガン使われてます。自分の手がけた書体に出会うのは嬉しいです。

e0175918_1501542.jpg

小文字アイの点のあるのとないのでは発音が違う。

13日、空港の入国審査で約1時間並び、そのあとのタクシーもホテルの場所がわからずにグルグル回り、3周目でホテルに到着したのが、スピーカーが集まる夕食会の30分前。食事会にはギリギリ間に合いました。

食事会の時のレストランのバルコニーから、ほっとして見る夜景。
e0175918_14403480.jpg

e0175918_14405686.jpg


きょう14日、このあと私の出番です。このコンファレンスのテーマが「ストローク」なので、このブログでもちょっと前に書いた日本の丸ゴシックや看板の話をします。大阪の看板屋さんに取材した、丸ゴシックで字を書くときと角ゴシックのときとのストロークの分析をして、手間の違いを見せます。丸ゴシックの方が手間が少ないんです。
[PR]
by type_director | 2013-06-14 07:21 | Comments(0)
オランダの IJ コンビネーション
6月5日・6日は、オランダに出張でした。

ハーグにある王立芸術アカデミー(KABK)の「タイプ&メディア」コースの教授に招かれて、学生達の制作中のフォントデザインの講評と短い講演をしてきました。教授達とは以前からの知り合いで、じつは去年も呼ばれたのですがタイミングが合わず、今年やっと実現しました。
e0175918_19483229.jpg


さすが KABK 、レベル高いです。学生達の中に、私が4年くらい前にロシアでワークショップをやったときに来ていた人がいて、教室に入ってびっくり。再会を喜びました。

オランダと言えば、文字の組み合わせが面白いです。英語やドイツ語とは違って、「ij」のコンビネーションがよく出てきます。「アイ」の発音になります。

教授陣と打ち合わせのときに、教授の一人が飲んでいたコーヒー。打ち合わせや学生の作品の評価のために教授達が集まる場所が、学生といっしょの中庭。開かれている感じがイイです。「ALTIJD」は、「いつでも」という意味だそうです。
e0175918_1950112.jpg


駅で。
e0175918_19502661.jpg

e0175918_2081992.jpg


そう、「アイス」は ijs です。
e0175918_19575914.jpg
e0175918_19585041.jpg


こういう新鮮な文字の組み合わせが、ふだんと違う言語を使う国に行く楽しみの一つです。
[PR]
by type_director | 2013-06-07 19:47 | Comments(0)
日本は丸ゴシック体の宝庫(3)・バス編
バスも丸ゴシック多いです。

新潟で。新旧のバス停が2つ立ち並ぶ、北埠頭バス停。古いのが撤去される前に撮らなくちゃと思った。
e0175918_0115257.jpg
e0175918_0144921.jpg


奈良です。奈良交通の唐招提寺バス停。
e0175918_0155518.jpg


近鉄バス。車で通りかかったときに車窓からとっさに撮ったので、バス停の名前は不明です。
e0175918_192319.jpg


新潟の古い方のバス停もそうですが、手書き文字がこのくらいかすれてくると、筆遣いとかがわかるんで、イイんです。

自分の地域のバス停は違う、という人も、ひょっとしてバスの車体の「入口」「出口」はどうか、確認してみてください。
e0175918_0184544.jpg
e0175918_1143033.jpg

この写真は「入口」が新潟交通、「出口」は東京都営バスです。

あと車内の注意書きもね。
e0175918_1105732.jpg

[PR]
by type_director | 2013-06-02 17:06 | 日本の丸ゴシック体 | Comments(0)