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目の錯覚の話
目の錯覚をさりげなく補正するためのトリック、書体デザインの大事な部分です。

たまたま子供といっしょに目の錯覚の話をしていて、アルファベットのXの字は実は2本の斜め線がつながっていない、という話になって、雑誌『デザインの現場』6月号のためにつくってあった図版のうち下の図を12歳の長男に見せたら目が輝いていました。

図左2点は、太い斜め線を2本重ねたもの。右2点は書体として発売されている文字 X の典型的な例。
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このように線が交差する場合、線がつながって見えるように、線を意図的にずらします。ままた黒みが集中しないように、太さも中心に近づくほど細くなるようにします。青のガイドラインを引くことで、どのくらいずらしているかがハッキリ分かります。

...というようなことを含めて私が欧文の文字デザインの初歩的なポイントを4ページ書いた『デザインの現場』6月号は、特集「文字のつくりかた」です。

和文の文字デザインにはもっと多くのページを割いていて、良質な日本語書体で定評のある 字游工房 の鳥海さんが和文書体のデザインの秘訣を書いています。けっこう細かく書かれていて、これで文字デザインの基本的な見方がわかるようなユニークな特集です。

実は4月に休暇で日本に行ったとき、この特集の件で鳥海さんとちょっと打ち合わせもしていたんですが、アルファベットと日本の文字と、秘訣と呼べるような部分がけっこう共通しています。前から気づいてはいたんだけど、あらためて記事にして並べるとそれがよく分かって面白かった。
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by type_director | 2009-05-27 18:59 | 文字のしくみ | Comments(13)
世界的な書体デザイナーって(3)
パート2では、フルティガーさんの書体のうち Frutiger だけにしぼってベルンを見るとこうなる、というものですが、フルティガーさんの他の書体だってもちろん見かけます。

パート2の上から2枚目の写真、ベーレン広場の市場の様子が写ってましたが、その背景にある建物は Vatter という自然食指向スーパーマーケットとレストランです。そこで使われているのはフルティガーさんの書体 Vectora (ベクトーラ)です。
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ちなみに、ここのレストランはビュッフェ形式で食べられます。飲み物のおすすめは「リンゴとショウガのジュース」です。

Vectora の例もうひとつ。これはベルン郊外 Wankdorf にあるサッカー場とショッピングセンターとの複合施設。
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このブログのタイトル写真もここで撮ってます。
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この書体の特徴は小文字が大きくて、大文字との差があまりないので、単語のデコボコを少なく抑えられることです。長文には不向きですが、小さいサイズの印字にも向きます。

こんなふうに、フルティガーさんの書体のうち2書体を軸にベルンを回ってみました。
じゃあまた別の書体は...てやってるときりがないので、このへんで。
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by type_director | 2009-05-26 13:13 | Comments(0)
世界的な書体デザイナーって(2)
ここでちょっと、路地レベルで出会える「フルティガーさんの仕事」を私の視点で表してみます。世界中どこでもいいわけですが、しぼりやすいところで、フルティガーさんの住むベルン市で見てみましょう。ベルンはこんな小さな街です。
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ベルンの駅を出ると観光案内のボードが。これがフルティガーさんの書体 Frutiger です。
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街の中央の市場の立つベーレン広場にも。街のあちこちに案内板があります。
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そのベーレン広場にある金融大手の UBS の制定書体はWalbaum(ワルバウムまたはドイツ語式発音でバルバウム)と Frutiger 。
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隣のショウウインドウに見えているのはスイス郵便の広告ですが、スイス郵便の制定書体も Frutiger です。ロゴもフルティガーさん作。
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ベルン市のバスの制定書体も Frutiger です。
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雨上がりのバス停で。路線図。
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街の道路名や案内も、
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スイス全土の道路標識も、数年前から Frutiger を若干アレンジした特注書体のものに変わりつつあります。
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こんなふうに、フルティガーさんは街のいたるところで自分の書体 Frutiger を目にしているわけです。音楽家にたとえたら、どこの街角でも自分の音楽が聞こえるみたいなもんでしょうか。バッハやモーツァルト? ビートルズ? でも、フルティガーさん本人の顔はほとんど知られていないと思っていいでしょう。そのへんが他の有名人とは違うところです。
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by type_director | 2009-05-24 14:24 | Comments(0)
世界的な書体デザイナーって(1)
このブログを読んでいる人にどこまで伝わるかな?と疑問を持ちながら書くことがあります。例えば「世界的な書体デザイナーのフルティガーさん」と書いても、デザイン業界の人でない限りそれがどういうことなのかっていうスケール感がつかめないかもしれない。だいたいフルティガーさんってどういう書体をつくったか、どこが新しいのか、とかも。

まず、フルティガーさんの名前を不動のものにしたこの書体について、ちょっと解説です。
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フルティガーさんのこの書体、 Frutiger といって彼の名字がそのまま書体名になっています。
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上の写真は現在のパリのシャルル・ド・ゴール空港です。この空港のサイン用書体として1968年から開発に着手、開発のコンセプトは「文字が矢印のように明快であること」でした。書体として一般向けに発売されたのは1976年です。識別性に優れていて、現在もいろんな空港で使われています。私の知っている限りでは、アムステルダム・スキポール空港、2008年の第5ターミナル開港にあわせてこの書体をアレンジして導入したヒースロー国際空港、韓国のソウル国際空港、あとは空港じゃないけど日本の JR の番線(プラットフォーム)表示とか。駅名のローマ字表記は別の書体だったと思う。

それまでのサンセリフ体、日本語だと角ゴシック体は、この Helvetica (ヘルベチカ。1957年に発売)みたいに、動きがなくてカタイ感じのものがほとんどでした。日本の JR の駅名はたしか Helvetica だったかな。
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なので、Frutiger のオープンで明るいデザインは画期的でした。文字の中の空間部分が広いので、とくに数字の3と8、6と9など、悪条件下で識別しにくくなる文字も分かりやすいのが利点です。試しに Akzidenz Grotesk (アクツィデンツ・グロテスク。もとは1896年のデザインだそうです。スイスのチューリッヒ国際空港で使用)とHelvetica と Frutiger とを同じようにぼやかしてみると...
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ね。これだけぼやけても、Frutiger はまだ読み取ることができます。

Frutiger 書体以降、人間的な柔らかい曲線を生かしたサンセリフ体がどんどんつくられます。つまり19世紀に誕生してからずっと垢抜けなかったサンセリフ体の新しい時代をつくった、まさにマイルストーン的な書体です。これが空港以外でどんな使われ方をしているか、パート2で書きます。

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ちなみに、ヒースロー空港で使われている Frutiger をアレンジした書体については、5月末に発売予定の雑誌『デザインの現場』6月号に写真と図版つきで詳しく載ります。取材と文は「これ、誰がデザインしたの?」の渡部さんと三宅さん。そちらもご覧ください。
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by type_director | 2009-05-23 06:58 | Comments(4)
宝庫
いま仕事でスイスのベルンに来ています。世界的な書体デザイナーのフルティガーさんといっしょに仕事をしています。フルティガーさんは、うちの母と同い年で、もうすぐ81歳です。

ベルンでの仕事のやりかたはこんなふうです。たいてい4日間くらい滞在して、毎朝ベルンの駅からバスに乗って出かけていって、2時間くらいいっしょにデザインの調整をして、あとはホテルに戻って続きをやり、翌日の朝一番にコピーセンターで修整した文字のプリントアウトをしてまたフルティガーさんに見せる...こんなふうにしてもう一年以上かけてつくってきた新しい書体ファミリーはもう完成間近です。

ベルンの街はこんなふうです。ユネスコの世界遺産に登録されたくらいで古い町並みや昔の時計塔が残っています。
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建物の外、道路に面したところに地下室への入り口があるのが、ベルンの建物の特徴です。きょう、たまたま入った本屋さんで、「文字についての本を探しているんです」と言ったら地下室に行く入り口の扉を開けて連れて行ってくれました。
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外は半袖でちょうど良いくらいの気温ですが、急な階段を降りた地下室はひんやり冷たくて薄暗い。かすかに湿った古本のにおい。「タイポグラフィ関係の本は奥の方ですから、じっくりご覧ください」と言って行きかけたので店主に写真を撮る許可を得て、階段を上るところを撮らせてもらいました。
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一人になった地下室で探しはじめたらけっこう良い本があって、片っ端からめくってたら1時間くらいかかったと思う。4冊買いました。一番の収穫は、私の大好きなヤン・チヒョルトの本『Schatzkammer der Schreibkunst』(日本語にすると「書の芸術の宝庫」でしょうか)。やったー、これ前から探してたんだ! 私にとってはこの薄暗い地下室が宝の山でした。
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さあ、良い本を買ったらこのあとはまた仕事だ! 明日もフルティガーさんが待っています!
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by type_director | 2009-05-13 19:48 | Comments(4)
ドイツの筆記体も絶滅寸前
私がときどき見に行く 宮里さんのサイト で、欧文(英語圏の)筆記体のことが書かれてました。なんで小文字rがあんな形なのか丁寧な解説付き。

ドイツにはもっとややこしい、こんな筆記体があった! しかもほんの50年前まであたりまえに使われていたんです。
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これは、先週フランクフルトの南にある街ダルムシュタットに行ったとき、ある博物館で展示されていた書類。結婚証明書の写しだそうで、1937年と最後に書かれていたのでたぶんその頃でしょう。これだけ長く書かれていると読みにくい。

これはドイツ筆記体の一種、ズュッタリン筆記体(Sütterlinschrift)で、20世紀前半のドイツではこれが一般的な書き文字でした。学校でも習わされて書いていて、ヘルマン・ツァップ氏も若いときはこの筆記体でノートを書いてました。ツァップさんの奥さんは、ズュッタリン筆記体とその前のドイツ筆記体とは違う、とおっしゃってましたが、私には違いが今ひとつよく分かりません。

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ドイツに来てすぐガラクタ市に行ったとき、このホウロウ製の看板がまったく読めなかったので写真に撮っておいた。いまは読める(自慢にならないけど)。これはデザイン化されたズュッタリンで「Rumbo Seife」と書いてあります。昔の石鹸のメーカーです。こういうのがあるからガラクタ市にときどき行きたくなるんです。

これは最近のガラクタ市で見つけた料理本。買ってきた。いまでもある家庭用の食品メーカー、エトカーの本です。
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表紙の文字はこう書いてあります。
"Dr. Oetker's Schul-Kochbuch" 

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裏表紙はこうです。
Ein heller Kopf nimmt stets "Oetker"!
小文字cは短い縦線1本、2本がnで、そうすると u が n とほとんど見分けがつかないから上に半円形の印をつけて u だとわからせる...だったら最初っから分かりやすく書いたらどうなんだ...同じ縦線2本でも、ちょっと出だしの位置の違うのが e 。そんなわけで、分かりにくいので現在は広告などではほとんど使われません。でもこの字体で手書き文字を書く人はまだいるし、最近の人が書く筆記体でも小文字の u に半円形の印をつける習慣は残ってます。うちの子供の学校からくるプリントとか通知でそういうのがある。さすがにズュッタリンほど読みにくくはないけど。でもこういう筆記体がなくなるのは惜しい気も。

これで中身はというと、ごく普通のドイツ文字です。筆記体と本の文字とはやっぱり違うわけで。
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by type_director | 2009-05-09 11:10 | 筆記体 | Comments(7)
ドイツ連邦政府のコーポレートデザイン
Die Bundesregierung(ドイツ連邦政府) のコーポレートデザイン、政府が発行する印刷物のレイアウト等のガイドラインです。ドイツ語なんですが、適当にボタンをクリックして開いてみるだけでもいろいろ出てきて楽しめます。この Typografie の項目なんか、書体の使用サイズなど細かい指定がされています。

オランダの書体デザイナー、ヘラルド・ウンガーさんと近々打ち合わせの予定なので、下調べしていて見つけたサイトです。

ドイツ連符政府がライノタイプに発注して、制定書体として数年前から使われているのが、彼のデザインした Demos Praxis です。正確にはそれらをちょっとアレンジして、名前も「Neue Demos」「Neue Praxis」です。「Neue」は英語の「new」にあたります。

制定書体(コーポレートタイプ)というのは、企業や団体がロゴやユニホームでイメージを統一するように、特定の書体を使って同じ「声のトーン」で語りかける、という考え方で、ヨーロッパではだいぶ浸透しています。名刺、封筒、カタログやウエブサイトで使われる文字の印象が同じというのは企業イメージとしてプラスなわけです。

このブログをお読みになってる方は、もう「ドイツの政府なんだからドイツの文字でなきゃいけない」、なんていう考え方はしませんよね。そう、書体を選ぶ際に大事なのは、一般の人が見て読みやすいこと、その企業や団体にふさわしいトーンを持っていることです。いいじゃないですか、Demos、Praxis どちらも小さく印字しても読みやすくて、見出しなどで大きく使うと角の丸みのおかげでフレンドリーな感じがしますよ。
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by type_director | 2009-05-01 18:03 | Comments(3)