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カテゴリ:文字のしくみ( 4 )
イタリック体の文字の微妙な傾き
雑誌『Typography』 最新号 がいよいよ発売です。

特集「美しい本と組版」で組版についてかなり掘り下げて、書体会社10社100書体の文字組見本の小冊子つきだそうで、お買い得感ありです。

私の連載「文字の裏ワザ」では、イタリック体の文字の微妙な傾きの違いについて解説しています。

たとえば、たいていのセリフ書体の b d l f の傾きは全部微妙に違っています。しかも一定の法則がある。微妙なのですぐには気づきませんが、文字を重ねてみると傾きを変えているのがわかります。上半分の長い直線部分の傾きが違うから重ならないんです。

まず Adobe Garamond のイタリック。
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これは ITC Galliard のイタリック。
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b は右に倒し、逆に d は少し起こしてつくると安定する、という裏ワザを使っています。

それって古い感じをねらった書体だけなんじゃないの?って思っている人もいると思うので、 Bodoni でも比べてみました。キッチリ揃った見え方の書体でも、やっぱり傾きを変えています。それは意図的にやっているんです。
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こういうのはもう理屈じゃなくて、そのほうが落ち着くというしかない。職人の勘がそうさせるんでしょうねー。私も、ふだんからローマン体をつくるときは、b だから右に倒して…ってつくっている。それが体に染みついているので、自分でも気づかずに調整しているわけですが、今回記事を書くときに、そうやって「職人なら当たり前」で通り過ぎがちな部分に改めて注目して分析しています。

この裏ワザがわかると、この写真のパッケージみたいな傾きの暴れたイタリックを見ても、うーむ良い味出しておるわい、という余裕の目で見ることができます。一見バラバラに見える傾きにも、ちゃんと理由があるのがわかるから。
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ちなみに書体は Monotype Garamond (モノタイプ・ガラモン)の Alt Italic つまりオルタネートのイタリックです。

サンセリフ体にも、これとは別の裏ワザが大文字に使われています。それは記事のほうをご覧ください!
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by type_director | 2016-05-08 07:17 | 文字のしくみ | Comments(0)
フォントをつくるうえで必要なお約束などが書いてある本
フォントをつくるうえで必要なお約束などが書いてある本を紹介してほしいという内容の投稿をいただいたので、良いのがあるかちょっと考えてみました。

デザイン的な部分でのお約束、というふうに受け取りました。ソフトウェアの操作方法についてならばチュートリアルをご覧ください。

紙媒体で、たぶん一番手に入りやすくて、詳しくて、というふうに絞っていくと、単行本の書籍で思いつくものはありませんが、私が毎号記事を連載している日本の雑誌『Typography』だと思います。日本語で読めるのもちょっとお得かと。
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『Typography』の第1号は特集「フォントをつくろう!」ですし、2号の特集「ロゴをつくろう!」にもいろいろなコツが載っています。日本語の文字やロゴについての記事も、私以外の超エキスパートが執筆されているので、さらにお役立ち感があります。
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私が担当する連載記事では、1号から6号まで「欧文書体のつくりかた」、7号からは「文字の裏ワザ」という記事を書いています。いまざっと見返したら、自画自賛といわれそうですが、やっぱりちょっと自信がある。けっこう毎回、どうやったら伝わるか考え抜いて書いて、図もできるだけわかりやすいのをつくって添えているつもりです。こないだ、9号に載せてもらう「文字の裏ワザ」連載3回目を書き終わって、いやーけっこう細かいところまで書いたなー、と思ったところに、このご質問をいただいたので。

だいたい「欧文書体のつくりかた」の一回目が、幾何学的・工業的・ヒューマニスティックの3種類のサンセリフ体をつくりわけるとか、他では見たことないです。「文字の裏ワザ」では、カーブの自然な出し方とかポイントの置き方まで図で示しているのでわかりやすいと思います。
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途中の号から手に取る読者のことも考えているので、全号通して見ると繰り返し出てくる内容がありますが、ほんとうに大事なことだから繰り返して読んで損はないです。

もしお持ちでなければ、ぜひバックナンバーを入手してください。

現在8号まで出ています。9号が発売になるときは、このブログでも告知します!
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by type_director | 2016-02-27 17:15 | 文字のしくみ | Comments(2)
A と V
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古代ローマの碑文、じつに美しいですね。このローマ字の A と V 、左右の斜め線のうちの A は左側が細い、 V は右側が細い。この太い細いのバランスってどこから来ているんでしょう。

私の本『欧文書体』にも書きましたが、碑文を彫り始める前には下書きをしなくちゃいけません。それを古代ローマの人は平筆か刷毛のようなものでして、それから彫ったと考えられています。それが今の書体のバランスの元になった。そういうことを今から約20年前、イギリスで勉強していて石彫りの人のうちに泊まり込んだときにはじめて教わった。きっと目がまん丸になってたと思う。

平筆を持ってシミュレーションをすると、どっちが細くなるのか一発でわかります。平筆の先端が水平じゃなくて、ちょっと左が下がると書きやすい。
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それで書いてみるとこんなふうになる。下に敷いた青い A の字は、ローマの西暦114年ころの碑文を元にした書体 Trajan(トレイジャン)です。デジタル書体時代の今でもよく使われてます。
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薄い墨で書いてみました。ね、だから左が細くなる。同じ筆の持ち方で V を書くところを想像してください。逆に V は右が細くなりますね。それがローマ碑文の写真にある AとV の関係です。
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サンセリフ体ってありますね。みんな同じ太さの線に見えるやつ。それも、ほんとに微妙に太さの差をつけている場合がほとんどです。これはオモテ。普通に見えるはず。
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これはたいがいの書体でそうなっている。いや、そうしなくちゃ気持ち悪い。歩くときに右手と右足とをいっしょに出したみたいで。だから、裏返しのやつを見ると落ち着かないんです。裏返してみました。
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by type_director | 2009-06-11 09:37 | 文字のしくみ | Comments(10)
目の錯覚の話
目の錯覚をさりげなく補正するためのトリック、書体デザインの大事な部分です。

たまたま子供といっしょに目の錯覚の話をしていて、アルファベットのXの字は実は2本の斜め線がつながっていない、という話になって、雑誌『デザインの現場』6月号のためにつくってあった図版のうち下の図を12歳の長男に見せたら目が輝いていました。

図左2点は、太い斜め線を2本重ねたもの。右2点は書体として発売されている文字 X の典型的な例。
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このように線が交差する場合、線がつながって見えるように、線を意図的にずらします。ままた黒みが集中しないように、太さも中心に近づくほど細くなるようにします。青のガイドラインを引くことで、どのくらいずらしているかがハッキリ分かります。

...というようなことを含めて私が欧文の文字デザインの初歩的なポイントを4ページ書いた『デザインの現場』6月号は、特集「文字のつくりかた」です。

和文の文字デザインにはもっと多くのページを割いていて、良質な日本語書体で定評のある 字游工房 の鳥海さんが和文書体のデザインの秘訣を書いています。けっこう細かく書かれていて、これで文字デザインの基本的な見方がわかるようなユニークな特集です。

実は4月に休暇で日本に行ったとき、この特集の件で鳥海さんとちょっと打ち合わせもしていたんですが、アルファベットと日本の文字と、秘訣と呼べるような部分がけっこう共通しています。前から気づいてはいたんだけど、あらためて記事にして並べるとそれがよく分かって面白かった。
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by type_director | 2009-05-27 18:59 | 文字のしくみ | Comments(13)