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カテゴリ:金属活字( 10 )
サンタさん=ニコラウスさん
ドイツではサンタさんは12月6日に来ます。サンタさんはドイツでは「サンタクロース」ではなく、「ニコラウス」です。

Monotype 日本の Facebook 記事に、指揮者 Nikolaus Harnoncourt(ニコラウス・アーノンクール)さんの話を書きました。先週まで出張で行っていた東京のCDショップで通りかかったこのアーノンクールさんの指揮によるモーツァルトのCD、私の書体 Clifford の使用例として買いました。前に彼の指揮によるブラームスのCDを図書館で借りてきて聴いたくらいで詳しくはないんですが、今年亡くなったことは知っていたので記念にと思って。
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そのあとアーノンクールさんのことを調べたら、きょう12月6日が誕生日と知って、「そうか、あれのことか」と思ってクリングシュポール活字鋳造所の出していたカレンダーを引っ張り出してみました。1934年のと35年のを持っています。

やっぱり、どちらのカレンダーも、12月6日のところに「Nikolaus」と書いてある。
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ドイツでは、いまはそんなに厳格ではないと思うけど、昔は子供の名前は生まれた日で決まったらしいです。これはドイツに移ってすぐにドイツ語の先生に聞いた。同じ日でも年によって名前が違うことがあるけれど、特定の日に付けられる名前というのがあるみたいで、たとえばこのカレンダーによれば12月24日なら女は Eva で男は Adam、12月31日なら Sylvester(または Silvester)。

そして Nikolaus Harnoncourt さんは12月6日生まれなので、この名前がつけられたのでしょう。

ちなみに、使われている活字書体は最初の写真は Kleist-Fraktur、そのあとの2枚はどちらも Wilhelm Klingspor Gotisch。
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(追記)あるウェブサイトによれば、誕生日にキリスト教の使徒の名前をつけてその使徒を守護神にするという意味合いがあるらしいです。もちろん好きな名前を選ぶ人もいて、その割合は増えているらしく、1894年にはカレンダーどおりの名前を付けられた子供の割合は50%、1994年での割合は32%だそうです。















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by type_director | 2016-12-06 10:26 | 金属活字 | Comments(5)
ダルムシュタットの博物館
先週、相変わらずお元気なグドルン・ツァップさんを訪問して、そのあと印刷機や鋳造機を動態保存しているダルムシュタットの博物館に行ってきました。昔の印刷機の上にのっかっている取っ手の付いた革製のタンポは、インキをのばすローラー以前の道具、インク・ボール。

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年季の入った活字ケース。中に入っている木活字の種類が一目でわかるようにしてあるらしい。

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ライノタイプ自動鋳造植字機も動かしていました。
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ヘルマン・ツァップさんのつくった書体 Melior の活字ケースも。
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今日はヘルマンさんの誕生日。ご存命だったら98歳でした。












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by type_director | 2016-11-08 20:43 | 金属活字 | Comments(0)
「春」という名前の書体
先週は雪が降っていたドイツ、ようやく春になりました。
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ブラックレターというと、黒の面積が多くて文章を組むとずっしりと重みを感じるものが多いですが、この書体はブラックレターには珍しく細身で、春の木々の梢のようなしなやかさを持っています。ルドルフ・コッホの1914年の活字書体「Frühling (春)」です。

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by type_director | 2016-05-05 20:01 | 金属活字 | Comments(2)
珍しい形の Baskerville 補足説明
前の記事で、V や W をライノタイプ用に「右下があまり空かないデザインにしたんでしょう」と書きました。それについてはちょっと説明が必要だと感じたので書きます。

前のブログの本文ページはライノタイプ自動鋳造植字機で組まれたと思われます。ライノタイプ自動鋳造植字機というのはこれです。以下の三枚の写真は『Linotype Instruktionsbuch(ライノタイプ取扱説明書)』からです。
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大人の背よりも高いです。下の方にキーボードが見えます。この前に普通は椅子があり、入力する人は座って作業します。

キーボードで入力した文書データをその場で活字の行単位で鋳込むもので、19世紀終わりに発明されて新聞や雑誌、書籍の組版の効率化を可能にした機械です。でも、その鋳造植字機にはいろんな制約がありました。

詳しい説明は省いて、入力された文章どおりに複数の母型が機械の上から下りてきて、並んで一行に鋳込まれた状態の活字がこれです。活字の母型が一行に並んでから溶けた鉛合金を流し込むので、一本一本バラバラにはなりません。
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その母型というのが、こんな真鍮の板です。この真鍮板の厚みが字の幅になります。W だと厚い板、I だと薄い板になります。図の5番のところ、板の横が凹んだ状態になって、この溝に合金が流し込まれます。
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ここでは上下に字の彫られている部分があり、A の字のレギュラーとボールド2ウェイトの母型をかねています。この対になった母型を使うと、入力している途中でボールドに切り替えることができます。合金が流し込まれる部分は一行なので、レギュラーの文章にボールドの単語が入る場合、その単語の部分だけ母型をレギュラーからボールドの位置にスライドさせて一行を組み、組み上がった後で合金を流し込んで鋳込むわけです。

板の厚みイコール字幅なので、このレギュラーとボールド二種類のウェイトは字幅が共通ということになります。

これがレギュラーとイタリックが対になった母型もあり、それだとイタリックはレギュラーと同じ幅になります。しかも、母型は斜めにならないし隣にはみ出すことができないので、四角の中にむりやりデザインすることになります。これがデザイン的な制約で、Baskerville のレギュラーとイタリックを例にとるとこうなります。字の周り、ここまでがその字の母型の幅だったんだろうと見当を付けて白い線を引きました。
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K のむりやりな感じや、N で右下の空きを埋めようとしているところや、下の写真のイタリックの小文字の f もデザイン的に苦しい。

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これがライノタイプ活字の特徴です。機構の説明はだいぶ省略しましたが、活字のデザインが難しかったことと、イタリック体で右下のアキをなるべく埋めようとしていたことが伝わればいいかなと思います。

でも、ライノタイプだと絶対 V や W がこうなるというわけでなく、右下が空いてもいいから普通の形の V や W が欲しい場合にはそういう母型もありました。さらに、右下が大きく空かなくてすむように、次に来る字を「Va」「Wa」など一つの母型にして用意もしてありました。
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by type_director | 2015-08-11 12:10 | 金属活字 | Comments(1)
珍しい形の Baskerville
長男が、学校の図書館から面白い本を借りてきた。初版が1930年代で、これは1946年版。
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書体は Baskerville ですが、イタリック体に、ライノタイプ自動鋳造植字機用に特殊なデザインが施された大文字 W や V などを使っています。
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機構上の制約があって大きく傾く字は苦手なので、右下があまり空かないデザインにしたんでしょう。

ライノタイプのカタログを探したら、同じ書体がありました。
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普通のデザインの大文字 W や V もありますが、長男が借りてきた本では特殊なデザインのほうを使っていたので、なんとなく Baskerville らしくない感じに見えるんです。
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by type_director | 2015-07-30 12:57 | 金属活字 | Comments(4)
Helvetica の合字
二つ前に書いた Cefischer さんのことがもっと知りたくなって、彼の自伝『Cefischer errinert sich』を古本で購入しました。1969年発行。届いて初めてわかったんですが、金属活字の Helvetica (ヘルベチカ)で組まれています。

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本文が全部 Helvetica で組まれた本を見るのはちょっと珍しい気がする。カタログやパンフレットならたくさんあるんですが、こういうふうに読み物としての本ではあまりない。

前に、合字について何度か書いてますが、いつもセリフ書体中心だった。たとえば これ これ これ にはサンセリフ書体の合字の写真もある。

これはサンセリフ体 Helvetica でドイツ語の組版。 ch 合字 ck 合字はしっかり使っている。ch、ck がちょっと詰まっているのがわかりますか?
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私の本棚にある活字 Helvetica の見本帳。
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ここでも ch 合字 ck 合字は使われてます。
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金属活字の Helvetica の合字は手元にありませんが、この活字みたいに二つの文字が一本になっているはず。セリフ書体やドイツ文字(ブラックレターともいう)では、つながったデザインでつくられることも多いです。
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今はたいていデジタルフォントの組版になって、ドイツ語でもこういう合字は使わないのが当たり前になっている。だから、こういう ch、ck がちょっと詰まった組版を見ると、少し昔の本だということがわかります。
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by type_director | 2015-03-15 12:58 | 金属活字 | Comments(0)
合字(6) tz 合字
二つ前の記事「合字(5)」で、このローマン体活字書体 Baskerville の中の tz 合字について読者からのご質問をいただきました。
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右から二番目が tz 合字。

図版をつけた方がわかりやすいので記事にします。

tz 合字は、もともとはブラックレターで使われることが多かったので、z が下に巻き込む形になっているのも、ブラックレターの書き方です。ローマン体では、ステンペル社の Baskerville みたいに tz 合字を持っている書体は異例で、同じステンペル社でも Garamond の見本では tz 合字は出てこない。

私の本棚の中(そんなに多くない)で、書籍の本文で tz 合字を使っている例。Rudolf Larisch の『Unterricht in ornamentaler Schrift』(第八刷、1922年刊)。
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7行目の最初「sitzt」は、その前の行からの単語で「besitzt」。9行目の最後の単語「umzusetzen」でも tz 合字が使われています。ちなみに、12行目のは似てるけど tz 合字でなくエスツェットです。「Anstoßes」と書いてある。

こんなふうに書籍全体を通して tz 合字を使った例は、あることはあるわけです。

下は、1950年代のステンペル社の書体見本帳。ここでは活字 Diotima のサンプルで tz 合字を使っています。 tz 合字を備えたローマン体のなかではわりと最近の例。これより最近の時代で tz 合字を持った書体があるか、すぐには思い浮かばない。未確認ですが、有名なローマン体の中ではこれが tz 合字を備えた最後の例なのかも?
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1955年に出されたステンペル社60周年記念の冊子の本文も、Diotima で組んであってそこに tz 合字が使われていた気がする。本を持っているので確認しようと思ったんですが、残念ながらいま見あたりません…。

これは Diotima のイタリック体。 tz 合字ですが、z のテールを下に巻き込まずに右に流している。
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最近で tz 合字が使われるケースがあるとすれば、たぶん、ほとんどがブラックレターじゃないか。実用的な文章の本文というよりは装飾的な何か、例えばディプロマとか、ロゴとかで。

活字じゃないけど、ビール「Köstritzer」のロゴ。
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tz 合字が使われた「ケース」。
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by type_director | 2014-03-22 16:18 | 金属活字 | Comments(15)
合字(5)
2009年6月・7月に書いた「合字」1から4の記事の続き。

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これは、「合字(2)」で使った写真で、読者の方からのご質問にも、こうお答えしています。
「このドイツ語の組版は、Buchdruckmaschinen の ch も ck も1文字として鋳込まれている合字です。」
その金属活字の組版か活字が見せられたらもっと説得力あるのになー、と思ってました。

それで、チャンスがあるたびにドイツの活字の合字を集めてきたので、ここでいっきにお見せします。

この写真のように、 ch、 ck がくっついていないけど「合字」という扱いでそれぞれが1文字として鋳込まれているもの(右二つ)もあるし、左の ck のように、くっついているデザインもあります。それは書体によって違います。
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これはステンペル社の Baskerville(バスカービル)。下の段右から、オランダ語で使う ij 合字、ドイツ語で使う tz 合字。
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これはステンペル社の Garamond(ガラモン) Kursiv つまりイタリック。右から、Qu、ck、ct、tt、fl。
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Qu はこうすることで Q のテールをゆったりのばせる。Q 単体の活字も当然あるんですが、Q の後ろには u が来ることが多いから。 左から2番目の tt 合字って、英語圏ではそんなに見かけない気がするけど、ドイツ語圏ではブラックレター書体とかはけっこう当たり前に tt 合字と ll (エル・エル)合字がありました。

これけっこうインパクトある。
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もう c が縦棒に食い込みすぎてわけわかんなくなってる。
でもリズム感的にはこれのほうがいいわけで。
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by type_director | 2014-03-16 16:16 | 金属活字 | Comments(2)
ロンドンの活字博物館
ロンドンの南にある Type Museum です。3月25日に嘉瑞工房の高岡さんたちやカリグラファの友人たちと行ってきました。
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もちろん、活字のできる行程とかモノタイプの仕組みとかもデモンストレーション付きで見せてくれるんで、カリグラファの友人たちにはそちらの方がウケがよかったみたいですが、個人的に一番テンションの上がったのが、Stephenson & Blake (スティーブンスン・アンド・ブレイク)の活字のパンチ(父型、または種字)やマトリックス(母型)倉庫です。これは私がこの博物館を10年くらい前に見学したときにはなかったけど、その後スティーブンスン・アンド・ブレイク社がやめちゃってから引き上げてきたものだそうです。
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じつは私は1993年ころにスティーブンスン・アンド・ブレイク社に直接行って、その時はまだ細々と営業を続けていた同社の社長の案内付きでこの倉庫を見ているわけですから、この棚たちとはこれで二回目の対面になります。無事でよかった。

スティーブンスン・アンド・ブレイク社で、社長と一緒に倉庫に行くときに、中が薄暗い旧式の狭いエレベーターに乗りこんで、蛇腹式の鉄格子みたいな扉をガラガラガチャンと閉めたあとで、社長に「これからトゥーム(tomb:墓、納骨堂)に行くぞ」と言われたときはゾクッとしました。「なんでトゥーム?」と聞いたら社長さんは「ここにボディが眠っているから」と言ってにやりと笑いました。シャレなんですよ。body は「死体」と「活字の本体」とをかけたわけです。

この棚はハリー・ポッターの映画でも使われたとか。
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引き出しを引っ張り出して見ると、こんな書体がありました。
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ドイツの家に戻って、うちの本棚のスティーブンスン・アンド・ブレイク社活字見本帳に同じ書体があるかなと思って探してみたら、「Lining Old Style Grotesque」という名前で出ているのが近い。これも「グロテスク」って呼んでたんだ。書体の名前なんてけっこう適当につけたんだなあ。
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ロンドンの観光ガイドには絶対載らない活字博物館。ここは一日いても飽きないところです。

活字製造の工房においてあった椅子が良い形をしていた。ちょこっと腰掛けるのにちょうどいい。私は普段は立って仕事しているので、椅子は要らないんですけどね。
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by type_director | 2009-03-29 08:15 | 金属活字 | Comments(0)
ツァップさん宅と活版印刷工房を訪問
ロンドンのホテルからの更新です。いま一週間の休暇をとっています。なのでごく簡単な報告です。

日本から嘉瑞工房の高岡重蔵先生・昌生さん親子とデザイナーの立野さんが遊びに来ていて、ドイツでの3日間はうちに泊まっていただいて、3月24日にいっしょにロンドンまで来ました。

ドイツでは、3月22日の日曜にヘルマン・ツァップさん宅を訪問しました。そこで3時間、どんなことを話したか、それはもう、このブログでは書ききれない。いずれまとめる機会をつくって、そこでちゃんと書きます。

翌23日には 映画『Helvetica』の冒頭のシーンで登場するマンフレット・シュルツさんの工房を見学。活字を一本一本拾って Helvetica と組んで印刷するあの人です。あの映画の冒頭のシーン、じつに良いですよね。

マンフレットと私はその映画が縁で友達になったんです。工房はいま資金難で、これまでやっていた定期的なワークショップを開いていないということですが、今回は特別に開けてくれました。これはマンフレットの工房で撮った写真です。これは8ポイントの Wilhelm Klingspor Gotisch の大文字の W 。後ろでほほえんでいるのがマンフレット。
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花形の活字。
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インキのローラー。
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こんなものを用意していてくれました。マンフレットが電話で「日本語では Domo arigato gozaimasu っていうんだろう?」ってしつこく聞いていたのはこのことだったのか! これはその場で刷ったものです。
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ロンドンでは、空港からホテルについて荷物を下ろして、まっしぐらにチャリングクロスの古書店街へ。良い収穫がありました。さて、きょうはこのあとロンドンのカリグラファたちといっしょに活字博物館に行く予定です。
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by type_director | 2009-03-25 08:23 | 金属活字 | Comments(0)