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カテゴリ:公共サイン・標識・観光案内( 16 )
公共サインについて感じること(3)安心感
いま、アメリカのシアトルに来ています。書体デザインのコンファレンス TypeCon に参加しています。シアトルのランドマーク、スペース・ニードル。
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オランダの建築家コールハースの設計による中央図書館。

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当然、ここでも町中のサインが気になります。

中央図書館の前にある案内の標識は、偶然ですが、このシリーズの第一回目でコンデンス体の例としてのせた Neue Helvetica Condensed のファミリー。太さは、Bold よりも一段階細い Medium のウェイトを使っています。

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コンデンス体に必要な視覚調整が施されているので文字のバランスが落ち着いている。「しっかりしている」感があります。
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通行人は、つねに公共サインを見ているわけではないのですが、行き先がこれでいいのかちょっと不安になって方向を確認したいとき、すっと目線を上げてこのデザインの案内が目に入ったら、たぶんすごくホッとすると思う。

そしてこれはもう少し細かい場所案内。
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Frutiger Bold Condensed という、別の書体を使っています。これもちゃんとコンデンス体を使っていて、狭い場所に入れても読みやすい。C や S の巻き込み部分が少なくて明るいのも読みやすさにプラスです。
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実際に移動のときにこの標識を頼りにしていない場合でも、あちこちでこういう標識に出会うと、「この町を歩いていても迷うことはない」という安心感に包まれるんじゃないでしょうか。そういう移動のサポート役が、ちゃんとオフィシャルな感じを持ってどっしり構えているのって大事です。


世界中を飛び回っているライターの渡部さんが、こちらのブログでアジアの都市での動き回りやすさの比較をしています。公共交通のサインのことについても言及しています。評価高めなのはシンガポール。




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by type_director | 2016-08-28 12:02 | 公共サイン・標識・観光案内 | Comments(2)
公共サインについて感じること(2)情報をそのまま届けること

前の記事では、日本のサインで左右を縮めて無理矢理おさめてしまった例を見ました。では、ドイツでは長い単語や名前をサインや標識にするときにどうしているんでしょうか。


ドイツでは、日本と違って交差点の名前が信号の脇についていることは普通ありません。よく見かけるのは、道路名の標識です。すべての道路に名前が付いているからです。ドイツには長い道路名があるので、コンデンス体が一般的です。最初から縦長の字形でコンパクトに収まるように設計されている書体です。


これらは標準的な長さの道路名。

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長い道路名も、短い道路名もあります。


これは長いのと短いのが一本のポールに取り付けられた例。

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裏側に回ってみました。文字が書いていない側です。そうすると、プレートを固定する枠の存在がよりハッキリ見えてきます。

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当然ですが、プレートの部分だけではなくて枠も表示用の板にあわせて長い枠がある。プレートの長さが先に決まっているのでなく、情報の量にあわせてプレートも枠も変えるという考え方です。


ドイツでは、そして私の見てきた多くの西洋諸国では、情報を読み手に届けることが最優先。


ある量を持った情報を、一定の高さの文字で表示する。文字はもともとコンパクトに設計された書体をそのまま使う。そのとき、情報を途中でよけいな変形をさせずにそのまま伝えようとすると、ある長さが必要になる。だからそれに見合った長さを選ぶ。道路名の長さだっていろいろあるから適した枠を選ぶのは大変だろうけど、肝心の情報つまり文字の形をゆがめるという発想はない。


枠の長さは何段階かあるんでしょう。さらに、中途半端な長さでも対応できるように長さを調整できる枠まであります。標識とその取り付け器具の製造業者のサイトから転載します。(引用元サイトはこちら

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つまり、情報がそのままの形で届くよう、周りがちゃんとフォローする。そういう仕組みが整っている。


こういう文化で育った人の目に、日本の多くの英文サインで無理矢理つめこんだ例はどう映るでしょうか。情報を届けることが優先されているように見えるでしょうか。




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by type_director | 2016-08-21 03:57 | 公共サイン・標識・観光案内 | Comments(2)
公共サインについて感じること(1)縦線は横線より太くつくる、が欧文デザインの基本

去年と今年は、日本に出張が多いので日本でも道路の交通標識や案内標識を中心にいろいろ写真を撮ってきています。ドイツの標識の例と比べると、わかってきたことがあるので、何回かに分けて書いてみようと思います。

まず、欧文サンセリフ体のデザインの基本について説明します。これは全く同じ太さの縦線と横線でつくった T。
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縦線が細く見えて、なんか落ち着きません。横線と縦線とを数値的にまったく同じ太さにしても、目の錯覚のせいで縦が細く見えてしまうんです。

なので、縦線のほうをちょっと太くすると落ち着きます。これは代表的なサンセリフ書体 Neue Helvetica Bold
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たいていのサンセリフ体と同じく、そういう調整がちゃんとされています。
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逆に、縦線をさらに細くした場合は、支えきれないような感じに見えてしまいます。
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仮に、「あえて縦線が細いという新しいコンセプトのサンセリフ体」とかいって、そのTをベースにこんなのをつくったとしたら…
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実際はこれは Neue Helvetica Bold を左右方向に思いきり縮めたものですが、落ち着かないという感覚的なことだけではなく、機能的にも良くない。標識など公共サインは、斜めから見られることも多いわけですが、ただでさえ細い縦線を斜めから見たら、もっと細く見えてしまいます。こんな縦画の細い書体が最初からあったとして、少なくともこれで長めの単語や文章は組めない、と判断されるのが普通だと思います。まして公共サインの書体として選ばれることはないでしょう。


でも、東京で見つけた英文のサインは、そんな変なバランスのものが多い。決められた幅に長い名前を入れようと左右を縮めて無理矢理押し込めている。これをやっちゃうと、縦線が極端に細くなる。結果として、真っ正面から読んでも読みにくいです。

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狭くなったうえに、文字と文字との間がリズム感を無視して詰められているのもあります。これは JR 渋谷駅付近で。
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Helvetica のようなポピュラーな書体は、バリエーションが豊富です。狭い場所に収める場合を考えて、書体ファミリーの中にコンデンス体(字幅が狭いバージョン)も持っていることが多いです。


これはそういう書体の一つ、 Neue Helvetica Bold Condensed。縦線は横線より太くつくる、という原則をきっちり守っているので、字の幅が狭くなっても落ち着いて読むことができます。

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さらに注意深く見ると、O は少し四隅を張って小判型になるように調整されています。コンパクトにしながらも真ん中のアキを大きめに見せてバランスをとったわけです。単に幅を縮めただけじゃない。幅の限られた場所でもしっかり読めるように、デザイナーの知恵と工夫がこの狭いデザインの中に詰め込まれているんです。


ここであげた東京の例は、いずれもそういう書体を使わないで左右を縮めているだけ。読みにくいし、いかにも「とりあえずつくった適当な間に合わせ」感が出て安っぽくなります。狭い場所にふさわしい書体を選んで使えば、英語の情報が頼りの人たちも助かるのに。そんなことを考えてしまいます。











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by type_director | 2016-08-17 04:01 | 公共サイン・標識 | Comments(0)
ドイツではピクトグラムのみのほうが多い気がする
私の住むドイツからは、ちょっと西に行けばフランス語、北西ならオランダ語、東へ行けばポーランド語やチェコ語圏になり、南へ行けばイタリア語が話されています。数時間の移動圏内で数カ国語が使われているわけです。

鉄道の駅の券売機には、ドイツ語の他に英語・フランス語・イタリア語でこんなふうに書いてあります。
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地上線の車輌の車内。乳母車・車いす用スペースの利用時には座席をたたむのでご協力をお願いしますという説明は紺色のステッカーでドイツ語で書かれていて、緊急避難用の扉のレバーの説明は、赤で注意をより喚起するようになっていて、ドイツ語と英仏伊4カ国語です。
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注意を喚起する、禁止事項を示す場合などは、ピクトグラムのみでとくに文章で説明とかないものが多いという印象です。

地上線の車輌の扉。開閉ボタンと、手を挟まないように注意ということがピクトグラムで示されます。
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地上線の車輌の車いすスペース。文字で書かれているのは「Sprechstelle」つまり「通話口」だけで、他の機能についてはピクトグラムです。
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地下鉄の車輌を外から見たところ。乳母車・車いす・自転車用のスペースがあることがわかる。
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スーパーマーケットの入り口。大きさや貼ってある場所なども、そんなに威圧的でない程度。
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ショッピングモールのエスカレーター。上の二つは、移動中だとちょっとわかりにくいかも。子供は前に立たせてください、ペットは抱き上げてください、ということだと思う。でも、乳母車は乗せるな、というのは強い禁止で色が違うので目立ちます。
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by type_director | 2016-04-07 05:32 | 公共サイン・標識 | Comments(0)
東京の英語の情報がなんか中途半端に見える
仕事で、東京と台湾と上海をまわってきのう夕方ドイツに戻りました。

今回、東京では「日本語を読めない外国人観光客の目線」で見てみました。

なんでかというと、日本ではなんか急に自治体や商業施設が力を入れて観光客向けのキャンペーンを展開しているのを感じたから。

都営地下鉄の入り口にも、英語をはじめ数カ国語で組まれたパンフレットとか地図、英語のガイドブックがたくさんある。
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でも、街を実際に歩いてみると、「入り口だけ英語」みたいなのが多くて気になるんです。

新宿区のオフィスビルですが、「INFORMATION」の下にある社名などはすべて日本語。観光客には縁のないところかもしれないけど、仕事で来る人もいるはずです。
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歩いていて、こういうのが足下に現れると、なにを「STOP!」すればいいか、迷わないのか? とか。
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つまり、英文の文章から入ってくるのに、途中からは「日本語がわかることが基本だよね」的な情報がすごく多い気がしてしまう。

商業施設が力を入れて観光客向けのキャンペーンを展開している割には、意外とそこにたどり着くまでが大変だったりするんじゃないかと思ったので、観光客が行きそうなところを回ってみました。江戸東京博物館を出発して、都営大江戸線から浅草線に乗り継いでスカイツリーまで行ってみた。

地下鉄の車内にある地下鉄路線図は、英語でも「SUBWAY MAP」と書かれているけど駅名は日本語で書かれている。日本語を読めない人には厳しいんじゃないか? そろそろ、「ただの飾りだから」ではすまなくなってきているのでは?
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乗り換える駅でホームに降り立つと、なんか乗り換えがややこしそうで、日本語が読めても不安になる。それなのに英語の情報がないとか、観光客はかなり心細いだろうなーと。
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このあと一階分エレベーターで上って改札まできて、やっと英語の情報が出てきましたが、とってつけた的な感じが。
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余談ですが、この「乗り換え」って、地上に出て普通の街の中を200メートル以上歩くんです。私の前の関西方面からと思われる3人の日本人グループもきょろきょろ標識を見ながら歩いてました。

そして、東京で撮った写真を飛行機の中で整理しながらドイツに戻ってきました。

中途半端な英語の情報に対しての記事 「外国人旅行客が戸惑う 日本のスタバの珍風景とは」が こちら に上がってました。これは、利用者目線で書かれた貴重な意見だと思います。

もし観光客に本当によろこんでもらおうとしたら、もっとできることがたくさんあるんじゃないかな? そんなことを考えてます。
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by type_director | 2016-03-18 10:12 | 公共サイン・標識 | Comments(4)
成田空港第3ターミナルと Neue Frutiger
先月の日本出張のときに、日本サインデザイン協会のかたがたといっしょに、成田空港第3ターミナル見学会に参加してきました。NAA(成田空港株式会社)のかたの付き添いと説明付きでした。
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陸上競技のトラックに見立てたコースのような線が引いてあり、出発に向かうコースは青、到着はトラックの赤茶色と分けてあります。これは第3ターミナルへ向かう通路。あと何メートルと書いてあるのは親切。
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数百メートル歩いて、ターミナル3に到着。
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中はこんなふうです。
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空港全体で、英文と数字には Neue Frutiger (ノイエ・フルティガー)が使われています。アドリアン・フルティガーさんのベルンのご自宅で、フルティガーさんと打ち合わせしながら改刻作業を始めたのが今からだいたい6年前。こんなふうに使ってもらえてうれしいです。
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by type_director | 2016-02-08 05:19 | 公共サイン・標識 | Comments(0)